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第19話 過去の断片

Penulis: 菊池まりな
last update Tanggal publikasi: 2026-08-05 07:39:06

峠を越えたのは、夕暮れ時だった。

稜線に出たとき、西の空が燃えていた。橙と茜と、その奥に沈んでいく太陽。山の向こうに広がる景色が、一瞬だけ金色に染まった。

柊は思わず足を止めた。

「きれい」

誰に言うでもなく、呟いた。

隣に朧が立った。同じ方向を見た。

「……ああ」

短い返事だったが、否定ではなかった。

蒼真は二人より少し先に立って、麓を見下ろしていた。

「あそこだ」

指差した先に、集落があった。

峠の北斜面、深い木々に囲まれた窪地に、十

数軒の家が肩を寄せ合うように建っていた。

煙が細く上がっている。夕餉ゆうげの支度をしているのだろう。人の気配があった。

そして──人ではない気配も。

柊は目を細めた。

「あやかしが、いる」

「ああ」蒼真は言った。「ここは、両方いる」

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